

アメリカ海軍は28日月曜日、F/A-18Eスーパーホーネット戦闘機がニミッツ級原子力空母ハリー・S・トルーマンの側面から転落し紅海の底に沈んだと発表した。イエメンの反政府武装組織フーシ派による攻撃の回避行動中に発生したとされている。
米海軍は28日の声明で、イエメンの紅海に展開した航空母艦ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から、F/A-18Eスーパーホーネット戦闘機1機と牽引トラクター1台が海中に落下したと発表した。海軍は格納庫内でスーパーホーネットをトラクターで牽引中に制御を失い落下したと報告している。その際、スーパーホーネットの操縦席から飛び降りざるを得なかった水兵1人が負傷、トラクターからも水兵が飛び降りたと報告されている。2人は海中に落下する前に脱出している。
制御を失って落下したと報告されているがCNNなどの報道によれば、米当局者の情報として、空母トルーマンがイエメンの反政府組織フーシの攻撃を回避して急旋回した際に起きた。この旋回により、移動中だったスーパーホーネットとトラクターが制御を失い落下した。6000万ドルとされる高価な機体を落下という形で失った事は問題だが、空母トルーマンが急旋回しなくてはならない程の回避行動をとらなければならかった事態に陥ったことが問題視されている。それはつまり、脅威が目前に迫っていた事を意味し、空母打撃群の多層防空システムについて疑問が生じている。
イエメンの紅海に派遣されている第8空母打撃群は旗艦の原子力空母ハリー・S・トルーマン、第1空母航空団の9個飛行隊、そして、第28駆逐艦隊のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のUSSスタウト(DDG 55)、USSザ・サリバンズ(DDG 68)、USSジェイソン・ダナム(DDG 109)3隻と、タイコンデロガ級巡洋艦ゲティスバーグ(CG 64)で構成され、駆逐艦と巡洋艦が艦隊の防空を担っている。アーレイ・バーク級駆逐艦の防空範囲は、最大で数百kmに及ぶ広域防空能力を有し、低高度の巡航ミサイルから高高度の弾道ミサイルまで多層的に迎撃できる。搭載する防空ミサイルRIM-174 SM-6は射程370km、RIM-66 SM-2は150kmを有する。通常であれば、艦隊の脅威となる前に駆逐艦が発見し、ミサイルや艦載機によって脅威を排除する。フーシ派はこれまで何度も紅海に展開する米海軍に対し、ドローンやミサイルで攻撃を実施。2024年6月には当時、紅海に居た米海軍の空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」への攻撃に成功したと発表したが、その後、無事な様子が確認され、ブラフだった事が分かっている。2025年3月15日と16日にかけて11機の自爆ドローンがトルーマンを襲ったが、これを全て戦闘機で撃墜し、トルーマンに接近させなかったと報告している。今回のフーシ派による攻撃の規模は分かっていないが、機体を落下させるほどの急旋回せざるを得なかったことから、脅威が直ぐそこまで迫っていた事が推測される。現状、トルーマン及び他の艦艇が被害を受けたという報告はない。


しかし、散発的に攻撃うける艦隊は過去に重大インシデントを起こしており、2024年12月にタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦ゲティスバーグが給油任務中だった味方のF/A-18Fスーパーホーネット戦闘機が撃墜するフレンドリーファイアを起こしている。当時、艦隊はフーシ派の攻撃を受けている最中であり、フーシ派のドローンと誤認したとされている。パイロット2名は無事脱出し、回収されている。今年2月初めには空母トルーマンが地中海のエジプト・ポートサイド近海で航行中、商船「ベシクタシュM」と衝突。右舷後部が損傷する事故を起こしている。損傷は軽微だったが、修理のために一時ドック入りし、2月末に復帰した。ただ、この責任を問われ、デイブ・スノーデン大佐が艦長を解任されている。


今回のF/A-18Eスーパーホーネットの落下の経緯については現在、調査が行われている。また、海中に落下しただけなので機体は無傷とされ、これを引き揚げるかも検討中されているが、フーシ派の攻撃に晒されている現状では引き揚げ不可能と思われる。