硫黄島星条旗、日系人部隊、黒人名誉勲章者、DEI認定で削除させる米軍功労者

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米国防省はトランプ政権の指示の元、多様性・公平性・包摂性(DEI)に関するコンテンツをWebサイトから削除している。その中には第二次大戦時の勝利の象徴でもある硫黄島の星条旗や最も多くの勲章を受けた日系人部隊、黒人名誉勲章受章者も含まれる。

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ネイティブアメリカンはDEIに該当

ワシントンポストの報道によれば、米国防総省は多様性・公平性・包摂性(DEI)を排除せよというトランプ政権の指示の元、太平洋戦争末期の激戦地で、多大な犠牲を出した「硫黄島の戦い」の勝利の象徴である摺鉢山に星条旗を掲揚した瞬間をとらえた写真をDEIの対象とし、国防省のWebページから削除した。削除された理由は星条旗を立てる写真に写った一人の兵士だ。旗はマイク・ストランク、レイニー・ギャグノン、フランクリン・スースリー、ハロルド・シュルツ、ハーロン・ブロック、アイラ・ヘイズの6人の海兵隊員によって立てられた。この内の一人、アイラ・ヘイズ上等兵はネイティブアメリカンで、Webページでは彼を「軍隊だけでなく、あらゆる分野でネイティブアメリカンが米国に果たしてきた貢献と犠牲」の一例として称賛していた。この他、第二次大戦時、暗号通信兵コードトーカーとして軍に従事したネイティブアメリカンのナバホ族の活躍に関する記事もWebページから消えつつある。ネイティブアメリカンはアメリカ独立以降、200年に渡って迫害を受けていた。北米大陸の先住民でありながらマイノリティであり、ネイティブアメリカンにフォーカスすることはおそらくDEIに該当し、削除対象となっているのであろう。

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日系人部隊

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削除されたWebページには第二次世界大戦時の日系人部隊「第442連隊戦闘団」に関するものもあった。日本による真珠湾攻撃後、米国では日系人が不当に強制収容所に収容されるなど、厳しい状況に置かれてた。そのためアメリカへの忠誠を示すため、多くの日系人が軍に志願。いくつかの日系人部隊が米陸軍に編制され、第442連隊はその内の一つになる。士官を除くと部隊を構成していた4,000人の兵士のほとんどはアメリカ生まれの日系2世になる。部隊はヨーロッパ戦線に送られ、「Go for Broke(当たって砕けろ)」というモットーを掲げ、多大な損失を被りながらも、日系人の名誉を回復するため奮戦。3回の補充を受け、計14000人の日系人が従軍し、最終的に9,486個のパープルハート勲章、4000個以上のシルバースター、21個の名誉勲章、そして前例のない8個の大統領部隊表彰を受け、史上最も多くの勲章を受けたアメリカ陸軍部隊として知られ、その勇敢な戦いぶりにより、アメリカ国内の人種差別意識を変える一因となった。しかし、国防省はこの日系人部隊を称えるWebページを削除した。米陸軍広報担当者は「陸軍は同サイトのコンテンツに精力的に取り組んでおり、第442歩兵連隊と二世兵士に関する記事は、現在のガイドラインに沿って再公開される予定だ」と述べている。

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黒人名誉勲章者のページ削除

黒人兵に関するコンテンツも削除された事が確認されている。スター&ストライプの報道によれば、黒人名誉勲章受章者であるチャールズ・カルヴィン・ロジャース陸軍少将のWebページが3月15日に削除された事が確認されている。ロジャーズ氏は1951年に陸軍に入隊。入隊当時、陸軍はまだ人種隔離政策が敷かれており、黒人部隊に配属された。入隊6か月後に陸軍の人種隔離政策は廃止されている。1968年には部下300人を率いる砲兵大隊の指揮官としてベトナム戦争に従事。その際、激しい攻撃を受け、自身は3度負傷するも部下を鼓舞、大隊の指揮を続け、敵を撤退させた。その活躍を受け、1970年に当時のリチャード・ニクソン大統領から名誉勲章を授与された。この時、彼は中佐であり、名誉勲章を受けた最高位の黒人軍人となった。 名誉勲章以外にも、彼はそのキャリアの中で殊勲飛行十字章、ブロンズスター、レジオンドレイト勲章、パープルハート章、航空勲章10回、陸軍落下傘部隊章を授与され、1984年に少将として退役した。彼は生涯を通じて、黒人軍人が直面する差別について率直に発言し続けていた。ただ、ロジャース氏のページは2日後の17日の夜には表示されるようになった。国防省当局者は、ウェブサイトは自動削除プロセス中に誤って削除されたと述べているが真偽は不明だ。この他、米軍史上初の黒人パイロット部隊タスキーギ・エアメンのコンテンツが削除された事も確認されており、黒人という人種にフォーカスすることはDEIに該当するコンテンツと見なされるのかもしれない。

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トランプ大統領は選挙時からバイデン政権が進めた多様性・公平性・包摂性(DEI)政策を廃止する事を公約とし、米国防省ではトランプ政権の命令のもと、今年3月3日からDEIに関するコンテンツの取締りを強化、関連するコンテンツをSNSに投稿する事はNGなのはもちろんのこと、過去のコンテンツの削除も行われている。ピート・ヘグセス国防長官は「国防総省におけるDEIは死んだ」と述べており、国防総省のジョン・ウリオット報道官はメディアに出した声明で「国防総省がすべてのプラットフォームからDEIコンテンツを削除するという指示に迅速に従ったことを嬉しく思う」と述べている。このような政策のもと、戦争の貴重な記録が失われるのではと危惧されている。

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