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北朝鮮が新型ミサイル駆逐艦「崔賢(チェ・ヒョン)」を進水!同国初のVLS、AESAを搭載した艦艇

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写真:朝鮮中央通信

北朝鮮国営メディアの朝鮮中央通信は4月26日、新型ミサイル駆逐艦「崔賢(チェ・ヒョン)」の進水式が金正恩総書記出席のもと、盛大に執り行われた事を発表した。同艦は朝鮮人民海軍で初めて垂直発射システム(VLS)とAESAレーダーを搭載した水上艦になる。

朝鮮労働党総書記で朝鮮民主主義人民共和国国務委員長である金正恩総書記の出席の下、新たに建造された駆逐艦の進水記念式が朝鮮革命の初の武装力の創建日である4月25日、南浦造船所で盛大に行われた。進水式には金正恩氏の愛娘の金 主愛(キム・ジュエ)、党と政府、軍部の幹部たちと駆逐艦の建造に寄与した南浦造船所の労働者たち、艦船工業部門の幹部と研究士たち、朝鮮人民軍の海軍将兵、海軍の退役将官たち、金正淑海軍大学の教職員、学生たち、朝鮮人民軍の各軍種および軍団指揮官、省、中央機関の幹部たちが参加した。

5000トン級の新型駆逐艦は「崔賢級」に分類され、その一番艦の「崔賢(チェ・ヒョン)」と命名された。崔賢は1924年から抗日独立運動に参加し、戦後は国防大臣、人民軍大将、党内序列第5位となる党政治委員会委員を務め、1982年に亡くなった人物だ。その息子「崔 龍海(チェ・リョンヘ)」は、朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員、最高人民会議常任委員会委員長などを務め、序列2位の立場にある。

スペック

写真:朝鮮中央通信

崔賢は北朝鮮艦艇では初めて垂直発射システム(VLS)とAESAレーダーを搭載する。船体もステルス性を意識した設計になっており、見た目だけで判断するなら、各国の最新駆逐艦と引けを取らないスペックがあるように見受けられる。

注視すべきは垂直発射システム(VLS)能力だ。写真や映像から確認できるだけで艦首の主砲の後ろには、小型VLSが32セル、大型VLSセルが12個搭載されており、艦尾にはさらに大型VLSが10セル、小型VLSが20セルと少なくとも74個のVLSセルを備えている。米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦は90から96セルのVLSを搭載。韓国の世宗大王級駆逐艦は128セル。中国の055型駆逐艦は112セル。そして、海上自衛隊のまや型護衛艦が96セルなので、各国の駆逐艦と比較しても引け取らない数だ。しかも、各国の駆逐艦の排水量が8000~9000トンなのに対し、崔賢は5000トン級しかなく、このクラスでこの数のVLSは驚異的だ。またVLSだけではなく、艦中央部分には斜め向きのミサイル発射機のようなもの、艦首には短距離SAMも確認できる。朝鮮中央通信は駆逐艦の装備構成について「対空・対艦・対潜・対弾道ミサイル能力は言うまでもなく、攻撃手段、すなわち超音速戦略巡航ミサイル、戦術弾道ミサイルをはじめ陸上打撃作戦能力を最大限に強化できる武装システムが搭載されて多目的水上作戦を遂行できるようになり、その結果、地上作戦に対する海軍の直接的な干渉を高めることができた。」と報道。北朝鮮に関する情報を発信するNKニュースは「短距離戦術核ミサイルを搭載する可能性が高い」と報じている。

写真:朝鮮中央通信

搭載されている短距離SAMはロシアの防空システム「96K6 パーンツィリ-S1」の海上版「パーンツィリM」に酷似している。パーンツィリMは、地上配備型96K6 パーンツィリ-S1と同じ原理で海上での脅威に対処するために最適化された艦載用防空システムで、CIWS、SAM、レーダー光学制御システム(標的の自動探索、選択、発射機能を含む)を1つの装備に統合した戦闘モジュールになり、正式には近距離対空防衛システム(CIWS)に分類される。軍艦から20キロ、高度15キロの範囲にあるミサイル、ドローン、航空機と空中脅威に対抗できるよう設計されている。ヘルメスK SAMを8基、4×2の配置で装備。 副兵装に機関砲AO-18KD 30x165mmの連装砲を搭載し射程は5キロ、発射速度は毎分1万発。最大で4つの目標を同時に攻撃できる。 フェーズドアレイ・レーダーと連携し、目標探知距離は推定で最大75キロだ。これを北朝鮮が独自開発できるわけがなく、ロシアが崔賢の建造に協力した可能性は高い。この他、両舷にある30mmCIWSはAK-630、533mm2連装魚雷発射管はDAT-53とどちらもロシア製と見られている。艦首の主砲の口径は不明だが、ロシア基準であれば130mm砲の可能性が高い。

北朝鮮は崔賢を起工から僅か400日で建造したと鼓舞している。今年3月には建造中の戦略ミサイル原子力潜水艦を公開するなど海軍力を急速に高めている。その背景にはロシアがいるとされ、おりしも北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会は27日の声明で、ロシアへの派兵を正式に認めたばかり。ウクライナが制圧するロシア・クルスク州への北朝鮮兵の派兵は周知の事実だったが、北朝鮮、ロシアともこれまで公式に認めていなかったが、今回両国の軍事的協力関係を認めた形だ。

北朝鮮海軍は約790隻の艦艇を保有しているが、その多くは小型で旧式。​中には1930年代に建造された旧ソ連製の艦艇も現役で使用されている。​しかし、近年は新型駆逐艦やコルベットの建造・配備が進められており、海軍力の近代化が図られている。今後、ロシアの協力のもと、これが急速に進むかもしれない。

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