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コロンビアが次期戦闘機にグリペンE/Fを採用!しかし、米国の拒否権発動が懸念

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NATO

南米コロンビアは次期戦闘機にスウェーデンのSaab社が開発生産するJAS39 グリペンE/Fを採用する意向を発表した。しかし、麻薬戦争で同盟関係にある米国が拒否権を発動するのではと言われている。

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コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は4月3日、SNS上で、コロンビア空軍の老朽化したイスラエル製IAI クフィル戦闘機群を置き換えるため、スウェーデンからSaab JAS39 グリペンE/F戦闘機を購入する意向を発表した。「スウェーデン王国政府が署名した意向書に従い、同国の戦略的防空を優先プロジェクトとして承認した上で、ここに発表する。取得する航空機群は完全に新しく、ブラジルですでに運用されている最先端の技術を備えたサーブ・グリペンシリーズからのものである」とペトロ大統領は述べている。この発表は隣国ベネズエラとの緊張と国内のゲリラや麻薬カルテルといった安全保障上の課題の中、航空戦力の強化・近代化を目指すコロンビアにとって、極めて重要な転換点となる。機体数や総費用などの詳細は明らかにされていないが、今のクフィルの機体数が19機である事を考えると2個飛行隊20機以上の調達が推測される。今回の決定はコロンビア空軍の数十年にわたる旧兵器からの脱却を示すとともに、防衛戦略転換の決意の現れとも捉えられている。

コロンビア空軍のクフィル戦闘機(USAF)

コロンビア空軍(FAC)は1980年代後半に就役、半世紀が経ち、維持費が高額になっているクフィル戦闘機の運用に苦戦しており、2010年代から次期戦闘機の検討に入っていた。候補にはグリペンの他、米国のF-16、フランスのラファール、英独のユーロファイター タイフーンが上がっていた。初期評価ではグリペンは下位の評価を受けたが、サーブ社は長年に渡り、積極的なセールスを行い、技術移転、低いメンテナンス費用、迅速な納品スケジュールを強調していた。同社はまた、グリペンをコロンビアの予算制約に合わせた費用対効果の高いソリューションとして位置付け、ジャングル、山岳地帯の多い同国での運用上の利点と非対称紛争への適応性を強調してきた。また、隣国ブラジルが既にグリペンを運用、国内でライセンス生産しているのも大きいと思われる。

グリペンE/F

F-35を断られたタイ空軍はF-16の後継としてグリペンE/F戦闘機を購入する

グリペンはカナードとデルタ翼の組み合わせであるクロースカップルドデルタ形式を特徴とした第4世代戦闘機。1988年に初飛行、1996年にスウェーデン空軍で最初のモデル”グリペンA/B”の運用が始まっている。その後、電子機器をアップデートしたC/D、そして、最新のアビオニクス、エンジンを改修して、スーパークルーズを可能にした最新モデルE/Fが2018年に登場している。グリペンの最大の魅力は他の第4世代以上の戦闘機に比べてサイズが小さく低コスト、メンテナンスがしやすいこと。500mあれば離発着でき、直線道路での離着陸も容易で場所を選ばない。20分以内に燃料補給と再武装が可能であり、この特徴は、麻薬組織やゲリラ活動が活発なコロンビアにおいてニーズに合致している。その上、電子戦、機動力といった単純な戦闘機としての性能も高い。マッハ2の最高速度とスーパークルーズ能力、航続距離は2,500kmと能力は申し分ない。しかも1機あたりのコスト4000~6000万ドルはF-35の約半分であり、1時間当たりの飛行コスト5,800ドルはF-35の7分の1しかない。

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米国との関係悪化

コロンビア政府はトランプ政権一期目である2018年に24機のF-16調達について米国に要望書を送っており、F-16が最有力と目されていた。コロンビアと米国は長年に渡り、共産主義との闘い、麻薬戦争において共闘。2022年には米国はコロンビアを主要非NATO同盟国(MNNA)に指定し、米国とコロンビアの軍事的結びつきをさらに強化しており、当初、F-16調達が規定路線と思われていたが、今回、グリペンが選ばれた。トランプ政権の二期目がスタートし、両国の関係は悪化している。トランプ大統領が移民の強制送還を始めた際、ペトロ大統領はこれを受け入れないと表明。トランプ大統領は対抗としてコロンビアからの輸入品に即時25%の関税を課すと述べ、コロンビアが強制送還者を拒否する姿勢を維持した場合、翌月には関税が50%に引き上げられると脅し、結果、ペトロ大統領はトランプ氏の要求を飲むことになった。

そして、保護主義、国内産業を重視するトランプ政権が、F-16を購入させるためにコロンビアのグリペン購入を阻止するのではと懸念が上がっている。グリペンE/F型は、米国製のゼネラル・エレクトリック F414-GE-39E エンジンを使用している。これは米国の国際武器取引規則 (ITAR) の管轄下に入り、米国政府が拒否権を発動すれば、コロンビアはグリペンを購入できなくなる。コロンビアがグリペンを購入するというのは昨年から度々言われていたが、米国が拒否権を発動し、阻止していると報道があった。実際、米国当局はこれまでも、自国の戦略的利益に合わないとみなされた場合、米国製の部品を含む武器の輸出を時折阻止してきたからだ。ただ、サーブ社はそれを否定していた。ただ、仮に米国が拒否権を発動してもF-16の購入には至らないと見られている。候補の最有力はフランスのラファールになり、ラファールは米国製部品を使っていない。ただ、グリペンと比較するとコストは大幅増になる。

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