
40年前に生産され、2019年に退役した英空軍のトーネード戦闘攻撃機のパーツの一部がリサイクルされ、第6世代戦闘機のエンジンパーツに使用されている事が分かった。
航空機用エンジンの開発生産を主力とするイギリスのロールスロイス社は、イギリス空軍から2019年に全機退役したトーネード戦闘攻撃機のパーツを粉末金属に変え、それを使ってオルフェウス小型エンジン(Orpheus engine)用の新しい部品を3Dプリントで製造している事を明らかにした。オルフェウスは将来戦闘航空機システム(FCAS)に搭載するために設計されたエンジンになる。
※イギリスは日英伊が共同開発する第6世代戦闘機「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)プログラム」に参加しており、ロールスロイス社も参加。同社のリリース内では次世代戦闘機をFCASと呼称しているが、GCAPの事を指していると思われる。FCASは仏独西が共同開発する第6世代戦闘機プロジェクトの名でもある。
戦闘機生産には高価で希少性の高い金属が使用されるが、原材料不足では価格は高騰している。英国防省は軍の余剰資産の多くには高品質の鋼鉄、アルミニウム、チタンなどの戦略金属が含まれている事をふまえ、それらの再利用を検討。2019年に全機退役したトーネード攻撃戦闘機のパーツには高品質の鋼鉄、アルミニウム、チタンなどの戦略金属が含まれており、ロールスロイス社のプロジェクトチームは、これらの部品の一部を粉末(いわゆる「原料」)に霧化し、積層造形で新しい部品を製造できるかを検討する「Tornado 2 Tempest 」を開始。低圧空気圧縮機のジェットエンジンコンプレッサーブレードなど、チタンを大量に含む部品を洗浄し、霧化することに成功し、リサイクル部品から3Dプリントされたノーズコーンとコンプレッサーブレードを生産する事に成功した。プロジェクトチームは3Dプリントされたノーズコーンをオルフェウス実験エンジンに取り付け、テスト条件下で実行して、部品の将来の使用に対する適合性と安全性を実証し、良好な結果を得た。この結果について英国のマリア・イーグル国防調達産業大臣は「トーネード2テンペストプロジェクトは、国家安全保障への取り組みにおいて防衛が採用している創造性、独創性、革新性を強調するものです。主要な業界パートナーと協力することで、コスト削減を実現し、グローバルサプライチェーンへの依存を減らし、軍隊が国の安全を守るための最高の装備を備えることが可能になります。この取り組みは、環境と国家安全保障にプラスの影響を与えるだけでなく、プラン・フォー・チェンジの核心である成長の原動力としての国内防衛産業の支援にもなります。」と述べ、この開発により、納税者の税金が節約され、重要で高価な金属の世界的なサプライチェーンへの依存が軽減されると称えた。
トーネード戦闘攻撃機

トーネードはイギリス、西ドイツ、イタリアの3か国の共同開発として1970年代に開発、1979年から運用が始まった。可変翼タイプの戦闘攻撃機で、述べ、992機が生産。試作機は3か国で生産された。トーネードはマルチロール機として航空阻止、要撃、近接航空支援、偵察などいくつかのタイプが開発されたが、その後継として英独伊西の4か国で共同開発された多用途戦闘機ユーロファイタータイフーンが登場した事で徐々にその役目を終え、イギリス空軍では2019年に全機退役。ドイツとイタリアも2025年までに同機を全機退役させる事を決定している。イギリスは393機のトーネードを保有していたが、リサイクル可能な機体が何機残っているのかは不明だ。FCASの共同開発参加国のイタリアは100機のトーネードを保有、現在も50機程が現役とされる。