

インドネシア大統領はトルコ大統領との記者会見で、「インドネシアはトルコ産業界と協力して第5世代ジェット戦闘機KAANおよび潜水艦の開発に参加したいと考えている」と述べた。インドネシアは韓国の次世代戦闘機KF-21ポラメ開発計画に参加しているが、現状、共同開発をボイコットしている形になっており、今回の発言からKF-21から撤退し、KAANに鞍替えを検討していると思われる。
インドネシアメディアのアンタラによると、トルコを訪問中のプラボウォ・スビアント大統領は10日木曜日にエルドアン大統領とアンカラの大統領官邸で二国間会談を行った。会談後の共同声明で、スビアント大統領は、トルコの産業界と協力して第5世代戦闘機KAANおよび潜水艦の開発にインドネシアが参加したいとの意向を表明した。潜水艦の詳細については明らかにされていないが、トルコが現在開発建造中で2030年代の就役を目指している通常動力攻撃型潜水艦MILDEN級と思われる。また、大統領は、インドネシアとトルコが合弁防衛会社を設立することでも合意したと発表したが、この事業に関する詳細は明らかにしなかった。
注目すべきはKAAN戦闘機の開発計画に参加したい意向を表明したことだ。インドネシアは現在、韓国の次世代戦闘機KF-21ポラメの開発計画にも参加している。しかし、KF-21に関しては、インドネシアが度々問題を起こしたあげく、現状、共同開発をボイコットしている形になっている。KF-21は韓国側が主導する形でインドネシアとの二国間で始まった次世代戦闘機開発だ。インドネシアは総開発費8兆9000億ウォンの内2割、1兆7300億ウォンを負担し、26年6月まで開発分担金を納付する代わりに試作機1機と各種技術資料の移転を受け、戦闘機48機をインドネシアで現地生産する条件になっていた。しかし、2017年に最初の分担金2200億ウォンを納付して以降、経済難を理由に分担金を滞納。分担金は1兆6000億ウォンに減額された。2024年1月には開発に参加していたインドネシア人技術者が機密情報を持ち出そうとして摘発される。同年5月にはインドネシア側が「開発分担金の支払いを3分の1程度にとどめ、その分、技術移転も少なくして欲しい」という案を韓国側に提示。開発も佳境に入り、撤退されるのは困るため、韓国は減額要求をのみ、結果、6000億ウォンに減額された。しかし、韓国メディアによれば、インドネシア側は技術持出し事件について非協力な上に、これが解決するまで前進できないという立場をとっており、共同プロジェクトから事実上ボイコットした形なっているとされる。嫌気がさした韓国はインドネシアをプロジェクトから外すことも検討。しかし、調達数が減れば1機あたりの単価が大幅に上がる。韓国は120機の調達を計画しているが、単価上昇は計画に影響を及ぼす。韓国としては引き続き、インドネシアを引き留めたいとされ、今年3月には韓国の防衛事業庁長が同国を訪問。KF-21の共同開発の今後について協議を行った。しかし、それが不調に終わったのか、今回のインドネシアのトルコの次期戦闘機開発計画KAANの参加意向表明だ。
KAAN
KAANはトルコ航空宇宙産業(TAI)によって開発されている国産の次世代戦闘機。プロジェクトは2011年に始まり、2018年に正式に開発が始まった。第4.5世代戦闘機開発して始まったプロジェクトだが、ステルス戦闘機が主流になっていたこともあり、ステルス設計、アクティブフェーズドアレイ (AESA)、スーパークルーズ、その他の高度な機能を備えた第5世代戦闘機の開発に変更される。機体は全長21m、翼幅14m、全高6m。マッハ1.8の速度で飛行し、高度55,000フィートまで上昇でき、戦闘航続距離は約1,100km。100km以上離れた目標を探知できる先進的なAESAレーダー、ステルス性を上げるウェポンベイ、そして6,000kg以上のペイロードを擁する。初期モデルは米国のゼネラル・エレクトリック社製のF110エンジンを搭載するが、後期型では国産エンジンを搭載する予定だ。
KAANは当初2026年の初飛行、2030~33年の間での就役を目指していたが、2019年にロシアのS-400防空ミサイルシステムを購入したことから、参加していたF-35戦闘機の共同開発から締めだされると開発を加速。2024年2月には当初の計画よりも2年前倒しで初飛行を成功させる。2028年から2029年の間に最初の機体がトルコ空軍に納入される予定で、100機以上の調達を予定している。アメリカ、ロシア、中国といった大国に属さない第5世代戦闘機としてKAANは各国から注目を浴びている。
インドネシアは昨年、トルコからバイラクタルTB2無人機を購入。今年2月にはトルコの軍用無人機を開発するバイカル社が合弁事業を通じてインドネシアにドローン製造工場を建設する契約を締結するなど、両国は軍事面での協力関係を強化している。